「仕事に挑戦したいけれど、給料が増えた分だけ年金が減らされたら意味がない……」 「特例子会社や一般枠でフルタイムで働いたら、次の更新で落ちるのが怖い」
就労支援の現場で、必ずと言っていいほど相談されるのがこの「年金と就労の壁」です。
結論からお伝えします。一部の例外を除き、「稼いだ分だけ年金が1円単位で減らされる」という仕組みは障害年金にはありません。
今回は、知っている人だけが得をする「障害年金の支給停止ルール」と、損をしないためのキャリアの描き方を徹底解説します。
1. 勘違いしていませんか?「所得制限」があるのは一部だけ
まず整理しておきたいのが、「いくら稼いだら年金が止まるか」というルールです。
① 原則として「所得制限」はない
障害基礎年金や障害厚生年金(20歳以降に初診日がある場合)には、本人の収入による所得制限はありません。 年収が300万円あっても500万円あっても、障害の状態が等級に該当していれば、年金は全額支給されます。
② 【例外】「20歳前の傷病」による障害基礎年金
初診日が20歳前にある方の障害基礎年金には、所得制限が存在します。
- 全額停止: 所得額が472.1万円超
- 半額停止: 所得額が360.4万円超 (※扶養親族がいる場合、この上限は上がります)
逆に言えば、この金額を下回っていれば、働きながら年金を全額受け取ることが可能です。
2. 「働いている=元気になった」と判断される?【精神と身体の違い】
皆さんが一番恐れているのは、収入の額そのものではなく「働けている実績」によって更新時に等級が下がる(または支給停止になる)ことではないでしょうか。
ここには「身体障害」と「精神障害」で大きな違いがあります。
身体障害の場合
肢体不自由や内部障害など、状態が数値や検査結果で固定されている場合、働いていることが直接的に等級に影響することは少ないです。バリバリ働いて高年収を得ながら、1級や2級の年金を受給し続けている方は大勢います。
精神障害・知的障害の場合
こちらが要注意です。精神障害の審査では「日常生活能力」が重視されます。「フルタイムで働けている」という事実が、「日常生活に支障がない」と判断される材料の一つになり得るからです。
しかし、諦める必要はありません。 審査では「職場でどのような配慮を受けているか(ジョブコーチの支援、短時間勤務、業務の限定など)」が考慮されます。「働いているけれど、これだけのサポートがあってギリギリ成立している」という実態を正しく伝えることが、継続受給のカギとなります。
3. キャリコンが教える「トータル収入」最大化のキャリア戦略
「年金が止まるのが怖いから、ずっとB型事業所で、あるいは週2日のバイトで……」と制限をかけるのは、実は長期的に見ると「損」になる可能性があります。
戦略①:年金は「いつか止まるもの」と割り切る
厳しいようですが、精神障害の場合、体調が回復して「働けるようになること」は本来喜ばしいことです。 「年金+低い給料」で現状維持を目指すよりも、「年金があるうちにスキルを磨き、年金が止まってもそれ以上の給料を稼げる自分になる」という攻めの姿勢が、結果として生涯賃金を最大化します。
戦略②:「社会保険」という強力な味方をつける
一般枠や特例子会社で週30時間以上(※要件により20時間以上)働くと、厚生年金や健康保険に加入できます。 もし将来、別の病気やケガをした際、「障害厚生年金」という、基礎年金よりも手厚い保障を再度受けられる権利を手に入れることができるのです。これは最強のリスク管理です。
4. 浮いたお金をどう活かすか?「ジェイソン流」の出番です
「年金+給料」が入る時期は、人生における「ボーナスタイム」です。この時期にどれだけ資産の土台を作れるかで、将来の安心感が変わります。
💡 厚切りジェイソン流×障害者雇用の必勝法 給料が増えたからといって、生活レベルを上げてはいけません。
- 年金は「生活費」として使い、給与は「全額投資」に回す。
- あるいは、給与で生活し、年金は「将来の自分への仕送り」として新NISAで運用する。
このサイクルを数年回すだけで、数百万〜一千万円単位の「自分専用のセーフティネット」が完成します。
※「稼ぐ力」を最大化し、「使う力」を最小化する。この法則は、私たちが社会復帰する過程で最も強力な武器になります。
5. 結論:年金はあなたの「足かせ」ではなく「セーフティネット」
「働いたら年金が止まって損をするかもしれない」という不安は、言い換えればあなたがそれだけ真剣に「自立」を考えている証拠です。
しかし、ここまで見てきた通り、年金の壁の多くは「正しく知る」ことで乗り越えられるものです。むしろ、年金を受給しながら働ける期間は、人生において最も効率よく資産を築ける「黄金期」だと言えます。
今日から意識してほしい3つのポイント
- 「今」の安心を守る: 年金があるからこそ、無理な長時間労働を避け、自分に合ったペースで働き始めることができます。
- 「未来」の自分を助ける: 年金と給与の両方がある時期に、新NISAなどを活用してコツコツと「自分専用の年金」を育てましょう。
- 「プロ」の知見を使い倒す: 診断書の書き方や会社への配慮の求め方など、一人で悩まずに支援員や専門家を頼ってください。
年金は、あなたが動けなくなった時の「守り」であると同時に、新しい世界へ踏み出すための「挑戦権」でもあります。
「壁」を恐れて立ち止まるのではなく、その壁を土台にして、より高い場所へステップアップしていく。そんなあなたの挑戦を、私は臨床心理士・キャリアコンサルタントとして、そして同じ資産形成を志す仲間として、心から応援しています。
