「何を言っても響かない」利用者に疲弊するあなたへ。臨床心理士が教える「動機づけ」の視点と関わりのコツ

就労支援

「利用者さんのために一生懸命動いているのに、なぜか事態が好転しない……」
「アドバイスをしても『でも』『だって』と返ってきて、結局何も変わらない」

支援の現場で、そんな孤独で消耗する感覚を抱えていませんか?

就労支援・生活支援・相談支援の現場では、「本人のためを思って」言葉を尽くしているのに、

  • 行動は変わらない
  • むしろ関係がぎくしゃくする
  • 面談後にどっと疲れる

ということが少なくありません。

実は、就労支援における「何を言っても響かない」という現象の多くは、
支援スキルの不足ではなく、「支援者の優しすぎる正義感」から生まれていることがあります。

この記事では、

  • 臨床心理士の心理学的視点
  • キャリアコンサルタントとしての面談経験

をもとに、
相手のやる気を引き出し、支援者自身の心も軽くする「動機づけ」の考え方と具体的な関わりのコツを解説します。


なぜ、あなたの言葉は届かないのか?

良かれと思って伝えたアドバイスが、

  • 否定される
  • 話題を変えられる
  • 「分かってます」で終わる

そんなとき、現場では「正したい反射(Righting Reflex)」が起きています。

正したい反射(Righting Reflex)とは

人は他人から

  • 「こうすべきだ」
  • 「その考えは違う」
  • 「普通はこうする」

と正論をぶつけられると、無意識に
「今のままでいい理由」を探して反論したくなる生き物です。

つまり、

  • 支援者が熱心になるほど
  • 正論で説得しようとするほど

利用者さんは
「変わらない理由」を自ら強化してしまうのです。

これが、就労支援の現場でよく起きているパラドックスの正体です。

あなたの関わりが悪いわけではありません。
むしろ、真面目で責任感が強い支援者ほど、この罠に陥りやすいのです。


1. 「動かす」のではなく「引き出す」|動機づけ面接(MI)の視点

多くの支援者が無意識にやってしまうのは、

  • 支援者がエンジンになろうとする
  • やる気を“与えよう”とする

という関わり方です。

しかし、動機づけ面接(Motivational Interviewing:MI)では、
考え方が真逆になります。

動機づけ面接の基本的な発想

大切なのは、

  • 支援者が引っ張ることではなく
  • 相手の中にある「小さな着火点」を一緒に探すこと

です。

無理に説得するのをやめ、
相手がふと

「このままじゃ、ちょっと困るかも」

と口にする瞬間を待ち、拾い、広げる

この視点を持つだけで、

  • 面談中の消耗感
  • 無力感

は驚くほど減っていきます。

使える視点:チェンジトークを待つ

動機づけ面接では、

  • 変わりたい
  • 何とかしたい
  • 今のままは嫌だ

といった本人の言葉を「チェンジトーク」と呼びます。

支援者の仕事は、
チェンジトークを

  • 作ることではなく
  • 見逃さないこと

です。

声かけ例

  • 「今の話を聞いていて、少し困っている感じもしました」
  • 「変わりたい気持ちが、ほんの少し見えた気がします」

【現場のバイブル:技術を磨くならこの一冊】
現場で「響かない」壁にぶつかったとき、私自身も救われた本です。
世界標準の技法であり、これを知っているだけで面談の質が180度変わります。


2. 解決志向で「例外」を見つける|解決志向ブリーフセラピーの考え方

利用者さんが動かないとき、
私たちはつい

  • なぜできないのか
  • 何が足りないのか

を分析したくなります。

しかし、
「できない理由」を掘り下げても、本人の自己効力感は下がる一方です。

視点を変える:「例外」は必ずある

解決志向ブリーフセラピーでは、

  • うまくいかなかった日

ではなく、

  • わずかでもマシだった日
  • 例外的にできた瞬間

に注目します。

現場でよくある質問例

  • 「今週、1日だけ作業所に行けたのは、なぜだと思いますか?」
  • 「いつもより少し楽だった日は、何が違いましたか?」

この「例外」の中にこそ、
本人が自分の力で動けたヒントが隠されています。

支援者がやるべきこと

  • 評価しない
  • 正解を言わない
  • 本人の言葉を広げる

【即効性重視:面談の台本が欲しいならこれ】
「どう聞けばいいか」という具体的な質問フレーズが豊富です。
明日からの面談ですぐに使いたい支援者の方におすすめです。


3. 支援者自身の「燃え尽き」を防ぐ|境界線という考え方

「利用者さんの人生を良くしたい」
その思いが強い人ほど、

  • 何とかしてあげなければ
  • 見捨ててはいけない

と、自分を追い込みがちです。

しかし、
利用者の人生を背負いすぎてはいけません。

支援者の役割とは

支援者の役割は、

  • 答えを与えることではなく
  • 本人が答えを見つける「環境」を整えること

です。

相手を変えようとする執着を手放したとき、
不思議と相手が動き始めることは、現場ではよくあります。

境界線を引くということ

  • 変わるかどうかは本人の選択
  • 支援者は選択肢を提示する存在

【自分を守る:疲れた夜に読んでほしい一冊】
支援者が倒れては元も子もありません。私も辞めたいと思ったことは一度や二度ではありません。でも、不思議と今もこの仕事に関わっています。
心の境界線を適切に引き、自分自身をケアするための専門職向けお守り本です。


まとめ|「響かない時間」は、根を張っている時間

変化が見えない時期も、
あなたが投げかけた言葉は、
相手の心の奥で確実に種をまいています

「今日は本音が一つ聞けたから、それでいい」

そんなふうに、
自分自身の支援にも合格点を出してあげてください。

支援は、短距離走ではなく長距離走です。


さらに深く、支援の質を高めたい方へ

当ブログでは、

  • 就労支援の現場で本当に使える心理的視点
  • 支援者が燃え尽きないための考え方
  • 専門書・実務書のリサーチ

を体系的にまとめています。

現場で孤独を感じたとき、
「一人じゃない」と思える記事を、これからも届けていきます。